💡 コアセルベートとは何か?
〜シャンプー中にだけ起きる、髪と手触りの“架け橋”現象〜
■ そもそも「コアセルベート」って何?
**コアセルベート(coacervate)**とは、
**成分同士がくっついてできる液体状の小さな粒子(複合体)**のこと。
シャンプーの中では、
**コンディショニング成分(例:PQ-10)と洗浄成分(アニオン性界面活性剤)が水中でくっついてできる“トロッとした粒”**を指します。
この粒がすすぎ中に髪に吸着し、
滑らかさ・まとまり・ツヤを与えるのが「コアセルベートの働き」です。
🧪 コアセルベートが生まれる仕組み
1. 成分の「正」と「負」の引力
- カチオン性ポリマー(例:PQ-10) → プラスの電気(正電荷)
- アニオン性界面活性剤(例:ラウレス硫酸Na) → マイナスの電気(負電荷)
→ この静電相互作用によって、成分同士が引き合い、くっつき始めます。
2. 水で薄めたときに「白く濁る」のがサイン
- ボトルの中では安定しているシャンプーも、
- お湯で薄まっていくと成分が結びつきやすくなり、粒が生まれます。
この現象が コアセルベーション。
そこでできた粒子が コアセルベート です。
お湯でシャンプーを薄めた時に「白く濁る」ことがありますよね?
あれはまさに、コアセルベートが形成されている証拠なんです。
✨ なぜ、髪に良いの?
このトロッとしたコアセルベートは、
- ダメージでマイナスに帯電している髪
- に対して、プラス帯電した成分が引き寄せられる
→ その結果、吸着しやすく、定着しやすい状態になります。
つまり、
シャンプー中に自動的に「髪にくっつく潤滑膜」を形成してくれる、非常に賢い現象なのです。
🧴 コアセルベートが髪にもたらす効果
吸着したコアセルベートは、以下のようなメリットを与えます:
- ✅ きしみ感の軽減(摩擦を減らす)
- ✅ 指通りの改善(スリップ性向上)
- ✅ 静電気の防止
- ✅ ツヤや柔らかさの付与
- ✅ スタイリングのしやすさ
- ✅ 毛髪表面の保護膜としての機能
- ✅ **シリコーンや香料などを一緒に運ぶ“のりしろ”**としての役割も!
⚠️ すべての組み合わせでうまくいくとは限らない
コアセルベートは**「ただ起こせばいい」わけではありません**。
成分設計が悪いと、望ましくないコアセルベートも発生します。
● ソフトコンプレックス(◎)
- ゲル状または液体状
- 毛髪にしっかり吸着しやすく、滑らかな感触を与える
● ハードコンプレックス(×)
- 固体の沈殿物(白いかす、gunk)
- 毛髪や頭皮に残りやすく、きしみやべたつきの原因に
👉 シャンプー処方は、コアセルベートの“質”まで設計されているのです。
🧠 コアセルベートを最大限に活かすには?
1. 使い方のコツ
- ❌ アプリケーターで事前に薄めすぎない
→ 髪に近いところで“その場で”コアセルベートを生成させる方が効果的 - ✅ 手のひらや髪の上で泡立ててからすすぐ
→ 希釈プロセスが自然に進み、吸着効率が高まります
2. 処方設計のポイント
- PQ-10濃度 → 多すぎると蓄積・べたつきの原因
- 界面活性剤の種類・量 → 泡立ちや粒の性質に影響
- 電解質(塩)やpH → 粒の形・量に大きく影響
✅ まとめ:コアセルベートは“塗るトリートメント”のようなもの
- シャンプー中に髪に直接できる、液状トリートメントのような被膜
- すすぎの工程で髪に自動吸着する
- 処方と使い方しだいで、質感が大きく変わる